戴帽式の精神はどこにいったの?(女性・看護師歴17年)

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みんなの看護観

私が就職した東京都内の精神病院は、歴史のある病院で建物も老朽化しており、外側から見ると異様な雰囲気のある建物に最初は驚きましたが、病院の院内はそれほど古さを感じさせない作りになっていました。

精神病の患者さんを見てショックを受ける

私が就職した精神病院はベッド数も500床以上ある大規模な精神病院であり、さまざまな精神病の患者さんが入院していました。
うつ病でご飯を食べる事が出来ずにやせ細っている人、統合失調症でいつも人の声や笑い声を気にして周りの様子をうかがっている人、躁の状態となって看護師や患者さんに片っ端から話しかけている人、薬の副作用でろれつが回らなくなり、体の筋肉が硬直してまともに歩く事すら出来なくなっている人・・・

衝撃を受けました。

私は精神病院に就職して実際の患者さんを目の当たりにして、「私が精神病の患者さんを救う」などと考えていた事は、とんでもない思い上がりだった事に気がつきました。

精神病の患者さんをからかう看護師

私が就職した精神病院には、当時患者さんの事を人間扱いしない看護師も中にはいました。
精神病の患者さんは言動や行動がまるで喜劇のように見える人も多く、奇妙な言動や動きをしている患者さんや薬の副作用で顔の筋肉がゆがんでしまっている患者さんの事を、看護師同士であだ名を付け合い、からかっていたのです。
私は、ただでさえデリケートに接しなくてはいけない精神病の患者さんをつかまえてまるでオモチャのようにしてあだ名をつけ、からかっている看護師の同僚や先輩とは次第に口を利かなくなってゆきました。
「戴帽式の精神はどこにいったの?」
そう問いかけたくなる場面が、精神病院の看護師の振る舞いにはたくさんあったのです。

イジメに遭うも、患者さんから力をもらう

精神病の患者さんをオモチャにしてからかう看護師の同僚や先輩と意識的に口を利かないようにしていた私は、イジメの対象になってゆきました。
制服の仕様が変わっても私にだけ知らされずに古い旧式のナース服を着て勤務させられたり、昼食も誰も一緒に取ってくれない、というような子供じみたイジメが同僚の看護師からあったのです。
イジメがエスカレートし、「もう辞めよう」と思っていた時に、私は一人の精神病の患者さんから「○○ちゃん、元気ないね。どうしたの?」と気落ちしていた私を見て、声をかけてくれたのです。
その男性の患者さんは50歳で、20代の時に統合失調症を発病し、自宅の引きこもりを15年、精神病院の入院が15年という、人生のほとんどを自宅の部屋と精神病院の閉鎖病棟と開放病棟の中で過ごしてきた人でした。
30年間も統合失調症で苦しんでいる患者さんに私の方が励まされるとは思いもしなかった私は、男性の患者さんから声をかけられたロビーのカフェテリアのテーブルにつっぷして大声で泣いてしまいました。
大声で泣く私を見た統合失調症の患者さんは、「大丈夫、大丈夫だよ」と言って私の肩をぽんぽんと叩いてくれました。
その瞬間に、私の中で何かが吹っ切れ、「イジメに屈せずに毎日患者さんとコミュニケーションを取ってゆこう」、「看護師としての仕事をまっとうしよう」という決意が生まれたのです。
なぜあの時に突然そのような決意が生まれたのかは分かりません。
おそらく、私を励ましてくれた患者さんと私の間に「同じ人間として苦しんでいる」という共通の意識のような、人間愛のような物が芽生えた結果、そのような決意をしたのだと今では感じています。

患者さんをオモチャにするような看護師にはならないで下さい

今、私は精神病院で看護師長として勤務しています。
看護師長として勤務している今の精神病院では、全看護師に「患者さんの容姿や言動をネタにしてからかうような真似を絶対にしないように」と事あるごとに伝えるようにしています。
患者さんは人格を持った一人の人間、「唯一の人」であり、患者さんの事を心配し、いつも気にかけているご家族がいる大切な存在なのだ、という事を常に忘れないようにして下さい。


「みんなの看護観」は、いろいろな方に看護観を問いかけたもので、看護学生や、ふと自身の看護のあり方に迷ってしまった方の参考になる記事が多数!

みんなの看護観2


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