看護師資格で働ける職場は病院以外にどんなところがあるか
ライター:吉田Ns.
ライフステージに合わせて働き方をデザインできる看護師
こんにちは。病院を飛び出しフリーランス看護師をしている吉田です。
ふと思いませんか?
「病院以外の仕事ってどんなだろう」
「他の仕事もやってみたいな」
そのお気持ち、すごくよくわかります。
特に、病院での勤務が辛いとき、これでいいのかなと不安を感じたとき、考えたりしますよね。
病院の外に飛び出した私から、まずあなたにお伝えしたいことは、
病院以外で働くにしても看護師資格を活かした方がメリットがある
ということ。
そのメリットとは次の3つです。
1.年齢を問わず需要がある
2.専門職なので割りが良い
3.先々でも看護師として柔軟な働き方ができる
デメリットとしては、ある種マルチな職種なので、どこへ行っても頼られてしまい、業務量が増える傾向がある点でしょうか。
病院で働く看護師の「労働環境への不満」は、離職理由ランキング上位にいつも君臨しています。他の仕事もやってみたい、と思う気持ちになるのも無理はないですよね。
それでも、外に出て見た私からすると、「看護資格はやはり強い」というのが実感なんです。
看護以外の他の仕事ももちろん「アリ」です。
でも、あなたの経済的・時間的自由度を生み出すには、と考えると、看護師資格を使った方が楽なんです。上記3つのメリットがその理由です。
他に事情がなければ、看護資格を使わない手はありません。
そこで、今回は「看護師の資格や経験を活かせたらいいけど、病院の外ってどんな仕事があるの?」というあなたに、以下の「看護師資格で働ける病院以外の場所」についてお話しします。
1.看護専門学校の専任教師
2.訪問看護
3.美容外科・美容皮膚科
4.介護施設
5.フリーランスの看護師
6.検診施設
7.保育園看護師
人はライフステージに応じて、生活も大きく変わります。
ですが、看護師資格を持っていれば、病院だけではなく、様々な場所で働き方を柔軟にデザインできるんです。
今、病院の外に出たいと思っている現役のあなたにも、
病棟勤務から離れてしまった潜在看護師と呼ばれるあなたにも、そのことをお伝えできればと思います。
看護師資格があればできる、病院以外での働き方
病院外での仕事にはこんな喜びや苦労が
2013年の「看護職員実態調査」によると、病院勤務が87.2%と、9割近くの看護師が病院に勤務しています。
また、2010年の日本自治体労働組合総連合(自治労連)の「看護職員の労働実態調査(中間報告)」によると、「辞めたい」と思っている看護師が80%を超えていました。
私も9割の中の1人で80%の中の1人でした。あなたもそうでしょうか?
私の場合、600床の病院で内科病棟に勤めた後、個人専属ナースになったり、医療コンシェルジュに転職したりしました。
「もう夜勤をしなくていいんだ」という解放感と、病院の中にいる時には見えなかった世の中の流れに触れ、新鮮で刺激のある毎日でした。
人との出会いも随分と広がりました。ちなみに、現在の夫もその出会いの中の1つ。娘も授かりました。
その一方で、病院勤務にはない苦労も経験しました。自分で仕事を作りお金をいただく厳しさや、人に裏切られたり騙されたことも。
社会保障面でも、業務や教育面でも、病院という組織が、いかに自分を守ってくれていたかを痛感することが多かったです。
でも、病院勤務、病院以外の勤務を両方経験した今思うのは、全て、看護師の資格や経験があったからこそできたものだということ。
病院にいてもいなくても、看護師でいさせてくれる社会に感謝しています。
現在フリーランスですが、「看護師です」と胸を張って生きています(個人で日本看護協会の会員になっています)。
もちろん、看護師として病院で熟していく素晴らしさもあります。
労働環境への不満は付き物ですが、収入は他の職場より高めですし、社会保障面も心強いですしね。
それでも、あなたに伝えたい。看護師の働き方はそれだけではないということ。
燃え尽きてしまう前に、燃え尽きた後でも、別な働き方の可能性を知って欲しいんです。
同じ看護でも間口を広げて他の働き方を経験することで、全く異なる価値観に触れることができます。様々な価値観に触れることは、視野を広げてくれます。
視野が広がり、それまで見えなかったものが見えた時はなんとも言えない幸せを感じませんか?そんな体験って、得がたいですよね。
病院以外の働き方は、それを与えてくれるんです。
それでは、本題に入ります。
病院以外で看護師資格を活かした働き方を7つご紹介します。
私自身が、「こんな働き方が、こんな世界があったの!?」と外に出て知ったものもあります。
あなたが、少しでも病院以外で働きたいというお気持ちがあるなら、この7つの場所で働く様子をイメージしてみてください。
自分の可能性を探ってみましょう。
病院だけじゃない!看護師資格で働ける職場7選
未来ある学生を育てるー看護専門学校の専任教員
学生の頃、看護実習を見てくれたり、外部講師として授業されていた先生を覚えていますか?
あの方々が、都道府県の「看護教員養成講習」というカリキュラムを経て認定された、あるいは大学で看護教育に必要な科目を履修し卒業した元看護師です。
看護師専門学校の教員で、「専任教員」と呼ばれています。
専任教員になる方法は、専門学校に採用された後、看護教員養成講習に通うというパターンが多いです。
学生の関わりに寄り添いながら、遠回しに説明したり、声をかけたりと、気づきを根気よく見守る忍耐力が求められます。 教育に関心があったり、後輩を育てることにやりがいを感じていた人にはオススメ。
もちろん、夜勤は無く、直接人命に関わらないので、臨床の重圧が辛い方は教育に回るのもよいと思います。
あなたのストレスを軽減し、QOLを上げるというだけではありません。人の命を預かる怖さを人一倍感じられるあなただからこそ、学生に伝えられるものがあるということです。
非常勤講師だと、授業の準備や書類の作成など全て持ち帰りとなりますが、「関わりの時間が限られている分、気は楽だよ」と専任教員をしている知人が話していました。
看護教員養成講習は、たいてい臨床経験5年が最低ラインとされます。また、都道府県によっては、臨床から5年以上離れていないことを条件にしているところも。
都道府県によって応募条件に多少違いがあるため、あなたの住んでいる都道府県で検索してみてください。
これからの時代に求められる看護No.1—訪問看護
患者様が医療の場にくるのではなく、あなたが患者様の生活に寄り添っていく看護。
一人で患者様のご自宅に行くのは大変そう…。その場で判断したり決断するのは責任が重い、そんなイメージに気後れするのではないかと思います。
前出の看護職員実態調査でも、訪問看護への就業意欲は高いとは言えない結果でした。訪問看護は看護師の確保が難しいのが現状です。
それは、訪問看護の魅力がまだ知られていない、ということでもあります。
一度この世界に魅せられてしまった看護師は、このフィールドから離れられなくなるくらい、面白さややりがいを日々感じる仕事なんです。
2025年問題を前に、早急に人材が求められている分野ですので、体制もどんどん整えられていくと思います。
時代に呼ばれている仕事でありながら、まだ人材が少ない状況。その分、他の職場と比べて先発者優位な点でも抜きん出ています。関心がある方は、早いうちに体験しておくのがオススメ。
確かに、病院とはまた違う総合的な力が求められます。それだけに、あなたの創造性が開発されるフィールドです。
人一倍美容が好きなら—美容外科・美容皮膚科
保険診療の病院とは全く異なる世界。看護学校では「美容看護」なんて授業、なかったですものね。
興味はあるけど近くて遠い業界ではないでしょうか。
あなたが人一倍美容が好きで、人が綺麗になることも楽しめる人なら適性があります。
外科で働いていた知人は、剃毛を数多くこなすうち脱毛に興味が出て、29歳の時に美容皮膚科に転職しました。
手際が良く「あなたが一番うまい。同じレーザーの痛みでも、それくらい手際が良いと我慢できる」と、お客様に喜ばれているそうです。
適性を見極めた上で上手にクリニックを選べば、ノルマなし、夜勤なし、残業少なめ、高給取りな美容看護師になることも不可能ではありません。
ただ、保険診療の病院で求められる看護スキル・知識は一旦ストップするので、美容業界でずっと働きたいのか、将来的に保険診療に戻りたいのか、最初に大まかに決めておくことをお勧めします。
いずれ保険診療に戻りたいなら、自由診療と保険診療両方に携われるクリニックがお勧めです。
また、しっかり適性や美容系クリニックの個性を把握してエントリーしないと、離職率も高い業界。美容専門の転職エージェントに登録し、ナマの情報を集めることが肝心です。
30、40代でも転職は不可能ではありませんが、若い方が参入しやすい業界なので、興味があるなら20代のうちに経験しておくと良いでしょう。
大手なら、福利厚生も病院並みかそれ以上に充実していますよ。
高齢者に癒し癒されー介護施設
急性期病棟で一緒に働いていた後輩。ひどい便秘持ちで下剤を常用していた彼女が、4年目にある介護施設に転職しました。
新人の頃から高齢者への関わりが大好きで、特別養護老人ホームは「天国です」と言っていましたね。
その職場は彼女に合っていたのか、1ヶ月も経つとあんなに頑固だった便秘が解消したそうです。
収入は前職に比べて見劣りはするものの、心身共に楽になり幸せ度は増したとのこと。
最先端の医療ではありませんが、ライフワークバランスを整えながら介護施設ならではのケアを極めていくのも1つの道です。
なお、一口に介護施設と言っても、施設によって役割が異なります。
入所者様の状態も施設の特徴や役割によって異なり、看護師に求められるケアレベルもそれに応じたものになります。
介護サービスを受ける高齢者はしばらく増加傾向です。介護施設は慢性的に看護師不足なので引く手あまたな状態。
あなたが高齢者との関わりが好きなら、一度経験しておくと将来のキャリアにプラスになるかもしれません。
自分で仕事をコントロール—フリーランスの看護師
組織に属さず、看護師向けのアルバイト求人サイトなどに登録して単発のアルバイトで生計を立てている看護師です。
単発のアルバイトは私も一時していました。
採血さえできれば仕事に困ることはありません。3時間働くだけで8,000円~1万円、これを月15回も入れれば15万円になりますからね。
イベントナースやツアーナースなどもあります。
イベントナースは、コンサートなどの救護室で怪我をしたり気分が悪くなった人の看護にあたります。
ツアーナースは、修学旅行や林間学校に付き添い、旅先での健康管理や救護、内服管理などを行う看護師。
ただ、イベントナースもツアーナースも、人気があるので募集があってもすぐ埋まってしまいます。仕事を取りに行くスピードや行動力が求められます。
このような単発バイトを渡り歩くフリーランス看護師は、高時給で拘束時間も少ないので、サクッと働いて稼ぎたいという人に向いています。
単発のアルバイトをしていた頃、50代の看護師さんと一緒になったことがあるんですが、40代から週に4日働いて気楽に生活しているといっていました。
技術屋ナースという働き方ですね。
変わったところでは、看護師ライター。
医療系の記事や看護師の体験記事などをパソコンで書いて、記事単位ごとに報酬を得ます。
クラウドソーシングサイトで記事依頼を受けたり、直接契約している企業や個人からの依頼で執筆します。
クラウドソーシングでは、看護師の転職や、医療脱毛の記事依頼が多いです。医療系のキュレーションサイトからもコンスタントに依頼があります。
もちろん、看護以外で書けるテーマがあれば、請負うことができます。
最初は10円位の簡単な案件から始まりますが、慣れてくると時給1000~2000円くらいになるので、在宅ライターとして生計を立てることも可能。
webライティングやクライアントとの交渉など、ある程度訓練が必要ですが、看護師ライター自体が少ないので、学生時代に看護レポートが書けていたなら十分通用します。
パソコンとネット環境があればどこでも仕事できるので、育児、介護その他通勤が難しい方にはオススメの働き方。
病院ではなかった、確定申告や雑務も自分でやらなければなりませんが、自分で仕事量や休日をコントロールできるのは大きな魅力です。
接遇に誇りを持っているならー検診施設
健康診断のための施設で、看護師は計測業務や採血、内視鏡検査の介助などを行います。
安楽に快適に受診できるよう、高い接遇能力が求められると同時に、スムーズな誘導のため、丁寧かつ無駄のない手技を期待されます。
夜勤がなく、予約制のルーティーンなので病棟に比べて残業も少なめ。基本的に健康な人が検査にくるので、命に直結する緊張感もなく精神・身体的にかなり楽です。
ただ、受診者は、患者様ではなくお客様に近いイメージで来所するので、看護師の対応について病院よりシビアな傾向があります。
総じて離職率が低いので、求人が少ないのが難点。
勤務体制も病棟に比べてフレキシブルな傾向があるので、あなたの優先順位にフィットしたところを探してみましょう。
子供に「せんせい」と呼ばれる仕事—保育園看護師
2007年に保育園看護師の制度ができたばかりで、体制は十分に整っているとは言えませんが、育児を経験した看護師に人気の職場。
子供の健康管理、衛生管理、怪我や病気の対応、スタッフへの啓蒙などはやりがいもありますし、子供達から「せんせい!」と慕われ、一緒に遊んだりできるのは保育園看護師ならではの魅力です。
まだまだ発展途上の職場なので、自分から保育園に働きかけ、仕事を生み出していくリーダーシップが求められます。
病院では子供に嫌われ、泣かれる役目の看護師(医師もですが)。患児が元気になるのは喜ばしいことですが、お別れする寂しさと背中合わせ…。そんな体験をしてきた小児科や産婦人科の看護師には、たまらない仕事です。
看護師の働き方にも新しいスタンダードを
あなたの一歩が、誰かの「やってみたい」になる
看護師資格で働ける病院以外の場所を7つ見てきました。
どれも規模としては病院に及びませんし、まだまだ体制が整っていなかったり、色眼鏡で見られたり…。収入面では、病棟勤務よりアップするものもダウンするものもあります。
でも、それぞれに魅力があり、あなたの適性や関心によっては今より幸福度が増すかもしれません。
このような病院以外の働き方を見てみると、これからの看護師の新しい働き方として発展していく可能性を秘めているように思えてなりません。
潜在看護師71万人。辞めたいと思う現役看護師80%。
看護師の働き方のバリエーションが増え、この数字がひっくり返るような新しいスタンダードができるといいですね。
あなたが働き方を模索し始めたのは、そんなスタンダードを作る一歩かもしれません。
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